ハイボールってどうやって流行った? いや、毎日酒が呑みたくて。


ココ1年ぐらいで、周りにハイボールをよく呑む人が増えている。
ついつい僕も故郷を裏切って?焼酎からハイボールに浮気してみたりしている。ああごめんなさい。


もちろん本件の牽引役であるサントリーがキャンペーンを張って、店舗への営業努力も凄まじいことは聞きかじっていた。
しかし、ここまで消費者の態度変容させるキャンペーンとは如何なるものだったのかという全体像について興味が出てきたので、いまさらながら小一時間調べてみた。


流通施策はわからないので、あと広告出稿量も具体的に分からず体感で見ているので、あくまでもプロモーションの一部を切り取った論考として受け取っていただければ幸いです。

サントリーの目的

まず、サントリーの今回のマーケティングの目的は(おそらく)、若い世代=アラサーあたりに対して「ウイスキーはオッサンの飲み物」というマインドセットを、「ウイスキーはぼくたちわたしたちのもの」へ変化させることだ。
"流行るにはワケがある"ということで、既に色々とその動きが一部レビューされているようだ。
若者がハイボールを飲み始めた? ブームの裏側を徹底検証!(nikkei TRENDYnet) - Yahoo!ニュース
livedoor ニュース - 今、ハイボールがブームって知ってた? 自宅でも簡単に作れるハイボールのレシピ[動画有り]

■プロモーション戦略推測

結論から言うと、以下のような戦略設計になっていたと思う(いやわかりません)。

フェーズ1

  • 「"ハイボール"という名前を若者はまず知らないため、とりあえずその存在を認知させよう。そうすれば新し物好きの若者にはウケるはずだ。」
  • そこで、若者向けに「手軽で飲みやすく、それでいて健康的」の理解を深めれば響くはずだ。

フェーズ2

  • さらに、飲み方についての奥深さ、飲む場所として"巣篭もり消費(宅呑み)"潮流を捉えよう。
  • 呑むだけでなく、合わせる料理の妙について関心を持ってもらえばより"ハマる"ハズだ。

フェーズ3

  • 駄目押しとして、ハイボールが実際に売れた、売れ続けている、という事実をちゃんと知ってもらおう。もう興味を抱かずには、呑まずにはいられないハズだ。

■アクションプラン抜粋

サントリーは、07年ぐらいからハイボール復興に向けた施策を実施しているようですが、ほとんどが手始めに流通周りの施策のようだ。
続いて、08年からプロモーションに力を入れるようになり、現在がある。そして、ブレイクは09年だと思われる。


実際の主な実施施策は、大まかにこんな感じ(多いにヌケ有りと思います。)

  1. ブロガーイベント「ハイボールナイト」
  2. 小雪さんを使ったCF、雑誌、駅ナカ、中吊りetc..
  3. プレゼントキャンペーン
  4. Webサイト上に小雪さんによる「ハイボールの作り方」動画

角瓶 サントリー公式
YouTube - 【サントリー】 おいしいハイボールの作り方 小雪さん篇 http://www.youtube.com/watch?v=sqlajc6qriq

  1. ハイボール店舗取材誘致
  2. ハイボールブーム、自宅呑み傾向記事プロモート
  3. 洋酒バル&バーラウンジ「Splitz' Aoyama(スプリッツ アオヤマ)」を東京・南青山
  4. 築地銀だこハイボール酒場」@新宿・歌舞伎町
  5. コンビニエンスストアで、「角ハイボールセット」(980円)を限定発売。
  6. ハイボール、取扱店3割増、サーバー設置店、年内に5倍。
  7. 大坂商店街とのコラボ
  8. レシピ考案

■プロモーションの流れまとめ

この展開を時系列に並べると、08年は仕込み、09年はじめから徐々にマスへのアプローチにドライブをかけていき、4月でブームがクリティカルマスに、5〜6月で揺ぎ無い状況を確立、といったところだと思われる。


報道量の変化(2008〜2009年:新聞紙、一部雑誌のみ<WEB含まず>)
20090812110356



ハイボール検索トレンド(2009年〜)
20090812112218


  • ●08年中に、ネット、流通周りを固めて、受け皿を用意しておく

2008年3月 白州蒸溜所でシングルモルトウイスキーセミナーのブロガーイベントを開催
2008年5月 ハイボールナイト by サントリー ONEDARI BOYS(クチコミマーケティングのパイオニア。ブロガー集団)
2008年11月 ハイボールナイト2ほかワイナリーやビール工場などで計8回のブロガーイベント
2008年11月 洋酒バル&バーラウンジ「Splitz' Aoyama(スプリッツ アオヤマ)」を東京・南青山

  • ●2009年1月 渾身のキャンペーン開始のろしを上げる

 →グラスにフォーカス(プレゼント)

  • ●2月から本格的な「ハイボールをはじめよう!」マスプロモーション展開

 →割るための「ソーダ」にフォーカス

  • ●3月

 「角ハイボールセット」プレゼントで"自宅呑み"フォーカス
 さらに追い討ちで「コンビニエンスストア限定の450mlサイズ」投入

  • ●4月 じわり人気報道多発、ハイボールサーバー無償提供店を5倍の500店に増大

2009/04/15 日本経済新聞 「ハイボールやホッピー、レトロなお酒、若者酔う――飲みやすさ・価格に魅力。」

  • ●5月 朝日、日経などが相次いで"自宅呑みブーム"を報道、"ウイスキー復活"を断言

2009/05/15 日本経済新聞「自宅でおいしいハイボールを作れます――。」
2009/05/20 朝日新聞 「(情報フラッシュ)自宅でハイボール ウイスキーのセット発売 サントリー酒類
2009/05/26 朝日新聞ウイスキーが脱「オヤジ」 手ごろ価格、人気復活」
2009/05/28 日本経済新聞サントリーウイスキー11年ぶり増産、ハイボール、若者にも人気。」
2009/05/28 築地銀だこハイボール酒場OPEN

2009/06/12 日経MJ 「夏こそハイボール!?、サントリー、レシピや景品。」
2009/06/17 日経MJ 「 ヒット商品番付――優れた技術、市場に風穴。
...に現れた救世主が、炭酸水で割る「ハイボール」だ。昔親しんだ中高年だけでなく、安..」
2009/06/22 日経MJ 「コロワイド東日本、ハイボール向け料理開発、サントリー系と組む。」

  • ●7月 「工場見学」、「商店街コラボ」とさらにネタを投入

2009/07/11 日本経済新聞ウイスキー蒸留所で製造工程見学し試飲、琥珀モルト、香りが出迎え(お出かけナビ)」
2009/07/07 朝日新聞「(情報フラッシュ)ご当地ハイボール誕生 大阪・天神橋筋商店街サントリー【大阪】」

  • ●8月 売上拡大報道←今ココ

2009/08/08 毎日新聞 サントリーHD:ハイボール効果 「角瓶」15%増


流通対策とキレイに連動して、魅力的なCMやダイレクトリーチ施策を打ち、実ユーザーを着実に増やして維持し、時流で一気にレバレッジをかければ、あららすっかり酔っちゃった。


特に、個人的には「小雪」×「自宅」×「コンビニ小瓶」=お見事です。