天璋院篤姫 スイセ・ンッテレ・ベルヂャネーゾ

shuntastic2008-02-06


現在、NHK大河ドラマで放映中の「篤姫」をみたことがある諸兄はいらっしゃるだろうか。
前回の大河ドラマ風林火山」の影響で、第一回の視聴率は後塵を拝しているようなんだけど....


この篤姫、原作は宮尾登美子氏の『天璋院篤姫』で、昭和五十八年から五十九年にかけて日本経済新聞夕刊に連載された作品。
現在、講談社文庫から上下巻の読み応えバツグンの厚みで発売されています。


主人公の篤姫(のちの天璋院)は、島津家から嫁いで江戸幕府13代将軍・徳川家定正室にまでなった御人。
我がふるさと薩摩藩の藩主島津家は外様大名。最高石高は90万石と加賀藩に次ぐ大藩を形成していたとはいえ、島津家のたかが一門(分家)だった今和泉家から養女養女を繰り返し、ある意味では、今で言うところの学歴ロンダ、つまり御家ロンダリングを意図せず繰り返して、時の征夷大将軍正室にまで上り詰めた稀有な篤姫は、広く歴史を鑑みればみるほど稀有な存在だといえる。

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細かいところはもちろんぜひぜひ本書をお読みいただきたいが、篤姫の人生は非常に心を砕いた一生だった。


魑魅魍魎の徳川末期政権下にあって侍よりも器量をもつ一方で、病弱な夫・家定は、夫婦の交わりもなく篤姫わずか24歳の時に死去、お嬢出身の嫁和宮との嫁姑問題など、数限りない不幸を抱えつつも、アットホームかつ細やかで大胆な愛情を持つ彼女は、関係する全員に尊敬され崇められていたという。


一般的に、歴史を紐解くときに絶対に間違ってはならないことが1つだけある。
小学生のときに習ったが、それは、現在の価値観で歴史を断罪しないことだ。
稀にここを理解しないまま、勝手気ままに歴史を紐解いて、例えば、大東亜戦争を一方的に非難したりワザと曲解する御仁がおられるので注意されたい。ネアンデルタール人は裸で歩いていたからキチガイ認定、となってはならない。


だから、篤姫を読むとき「女性が自らの人生を決められない時代、かわいそう」、そんなことに陥ってしまえば、篤姫や著者宮尾氏の本懐ではないだろう。
若くして夫を亡くした結果、篤姫は長くシャドウキャビネットとして徳川家一大事のために采配を振るい政治的盛者必衰が力いっぱい描写されている一方、他方で女盛りのひとりの女性としての様々な想いや自然な性欲、残せなかった子孫への葛藤が、女性の筆者らしい細やかさと愛情を以って描かれていて読み応えが十分すぎる。


これを読んでしまったら、女性ならば必読の一冊(厳密には上下巻)といわざるを得ない。
周囲のあまねく女性陣に薦めている真っ最中です(笑)
特に20代後半、勝つか負けるかの大勝負の女性にとってこの1冊を読むか読まないかでは、大きな差がつくのではないでしょうか。
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さすが超大作。
2008年、今のところこの本を凌駕する小説に出会える気がさらさらしませんが、圧倒的暫定1位ということでひとつみなさまもよろしくお願いいたします。


篤姫は、東京都台東区上野の寛永寺に夫・家定の墓と並べて埋葬されているので、特に薩摩出身の諸兄はこの機会に時間を作ってお参りされたい。


江戸東京博物館にて、特別展「天璋院篤姫」が2月19日(火)から4月6日(日)まで。
これも参らねば。

大河ドラマ 篤姫
http://www3.nhk.or.jp/taiga/
特別展「天璋院篤姫
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2008/0219/200802.html
寛永寺 東京都台東区上野桜木1-14-11 山手線・京浜東北線鶯谷駅南口徒歩5分
http://www.tokyoguide.net/spot/35/

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篤姫 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

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