娘、河野咲子が、私の命でした


眉山−びざん−」はよかった。
特におかあさんになるヒト、おかあさんになったヒトには全員観てもらいたい。
監督は犬童一心、主演松嶋菜々子で、原作がさだまさし。主題歌がレミオロメンという、如何にも売らん哉の顔ぶれに、観る前から気後れしそうになるが、内容は充実の家族愛佳作。


ストーリーとしては決して奇を衒うモノではない。
元徳島でがんに侵された母親(宮本信子)をきっかけに、東京でバリキャリを積み上げていた一人娘(松嶋菜々子)との母娘の深い愛情が淡々と描かれる、というもの。


万人受けはしない映画だとは思いますが、家族愛の慈しみを感じることができるヒトにとってはかなり心に響く映画だろう。
特に、自身が一人娘、もしくは一人娘を持つ母親であれば、もう目からアレ・・・ヘンな汁が....は免れないだろう、と。
1人息子でもないぼくでもそう感じてしまったのですから。



この映画で終始あらゆる角度から描かれているのは、勝気な江戸っ子なため一見わがままに見えるが、凛とした母が辿ってきた人生、それは、ただひたすらに娘への愛情だったということだ。
それをもう片方の主演宮本信子さんが伊丹映画よろしく、10年ぶりの復帰作として力強く美しく演技しており、一時も画面から目を離すことができない。


映画のクライマックスで明かされる母の強くて美しいメッセージは、娘だけでなく、観るものを静かにあたたかく包み込む。


徳島県の夏の風物詩「阿波踊り」を舞台に繰り広げられるという意味でも、今夏オススメのDVDだ。


去年の試写会は美智子皇后様もご覧になったのことからも、日本女性のおくゆかしさがこれでもか、と描かれている映画であることは想像に難くないでしょう。
歳を重ねるごとに、世の中の"母親"たちに畏怖の念を感じることが多くなりました。
(パチンコ屋に入り浸ったり、子どもより旦那よりママ友との関係を一大事とする母親などはもちろん含まれません。)


さださんの流石の原作と、宮本信子さんと松嶋菜々子さんのすばらしい熱演、犬童監督の演出に心から拍手を贈りたいと思います。

「眉山」オリジナル・サウンドトラック

「眉山」オリジナル・サウンドトラック