相場師一代 是川 銀蔵


相場師一代 (小学館文庫)

相場師一代 (小学館文庫)

是川銀蔵


是川銀蔵(これかわ ぎんぞう、 1897年7月28日 - 1992年9月12日)は日本の投資家、相場師。


激動の時代に翻弄されながらも、時には目の前の金をドブに捨てることも厭わない信念と人間味にあふれた生き様は、まさに最後の相場師の称号に値する。


是川銀蔵 - Wikipedia


是川銀蔵氏の自伝である、「相場師一代」を読了。
僕がこれから株で一儲けしたいということではなく、経済読みの師として彼の思想の一端を知ろうと思って読み進めました。


自伝の類は、小学生の頃から数えてもかなり好きなジャンルで、そこそこ読んでる気でいたけど、これは久々ガツンと来たハードコア系自伝。
個人の株取引で実に数千億の利益を得るなど昭和最後の相場師と呼ばれ、1992年に95歳で他界した是川銀蔵 aka コレギンの、正に波乱万丈の人生を綴った一冊。

私は自らの人生を自らの手で綴ることにより、株で成功することは不可能に近いという事実を伝える使命があると思い、筆をとることにした。

これまで頑なに自伝出版を拒んでいた彼が出版に踏み切ったかというと、氏の許可無くライターが氏の自伝的なものを出版してしまったため、安易に株で大儲けできるという間違った情報が流布されるのを防ぐためだといういう。


一見、この手の題名、著者だと、氏があたかもこの"不可能"を覆して株の売買で成功し、巨万の富を得たサクセスストーリーと思いがちだが、まったく違う。


それは、氏の投資哲学の原点を知ることによって明らかになるのですが、小学校しか卒業していないながらも、図書館に3年通いつめ独学で日本をはじめとする世界経済とそれをとりまく諸問題を徹底的に勉強する、この姿勢が貫かれた人生、それがこの自伝なのです。


氏の提唱するカメ三則は、株でなくとも人生訓として非常に有用ではないでしょうか。

・銘柄は水面下にある優良なものを選んでじっと待つこと
・経済、相場の動きからは常に眼を離さず、自分で勉強する
・過大な思惑はせず、手持ちの資金の中で行動する


繰り返し強調しますが、この本は、決して株で濡れ手に粟の人生を送った人の話ではありません。
徹頭徹尾、「徹底した勉強しか生き残る資格を身につける機会を提供してくれない」という、身体を張った教訓であります。


これからの経済は世界規模で激動を繰り返すことは間違いありません。
僕のように経済学のマスターを持っているだけで世界が読めるぜこの野郎と勘違いのアホウになっていては、グローバルレベルの情勢の変化に対応することはできないでしょう。自戒。


しかし、この社会科学を読み解き生き抜こうと望むなら、「死ぬまで勉強こそが財産」とした氏の生き様をかみ締め、改めて経済学に対して不断の努力を怠ってはならない、と思いました。


財団法人 是川奨学財団

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