ホンモノの天才を観た事があるか 「草間彌生 わたし大好き」

shuntastic2008-02-12


本当の本当で本物の天才をみた。
多分、これは人間じゃない。芸術獣。


現在公開中の映画「≒(ニアイコール)草間彌生 わたし大好き」(松本貴子監督)は、2006年3月より始まった総計50枚にも上る連作シリーズの30枚目、「愛はとこしえ」の制作風景からカメラで追ったものだ。
下書きは一切なく、縦横が大の男サイズのカンバスに黒のペンで1〜2日で一枚を一気に描き上げる存在感は、圧倒的なカリスマ性を醸し出していた。

草間彌生

作品もさることながら、初めて耳にする草間本人の語り口、語る言葉に、ある意味では作品以上に揺さぶられる結果になった。
幼少時に統合失調症をわずらったせいなのか滑舌はよいとは言えないが、自分自身について、芸術について、世間からの評価について、質問に対する答え、アシスタントに頼みごとをする一言に至るまで、常人のそれとは全くことなる言霊というものが映っていた。
常人の想定もあっさりと超えるものだった。

「あらいいわね〜素敵ね〜ほんと素敵。 こんな素敵なもの見たことない。
もう一回見せて〜 素敵〜。」


草間は、自らの作品を何度も褒め称えていた。
そして自分以外の何にも興味が無い、誰からも影響されたことは無いと言い切る。
でも、それは決して単なるナルシズムとは全く無縁のものであることは、見れば直ぐ分かる。


オフィシャルでも謳われている"「生」と「死」と「愛」のせめぎ合いの中から湧きあがる草間芸術の真髄"を是非目撃して欲しい。
必ず観る者を、有無をいわさず一瞬にして未知なる世界に引きずり込み、魂を激しく揺さぶることは間違いないです。

「アーティストは自分の作品が一番いいの。自分の作品が一番いいと思わないと暮らしていけないの」

78歳の前衛芸術家は、水玉のポップアイコンを描くアーティストではなく、言うなれば、単純に「天才」だった。証拠に自分でも「私はgenius」って言っている。
天才天才天才天才天才大天才
天才は嫌味なんて一切ないし、いつまでも観ても飽きないどころか飲み込まれて、飲み込まれたいと思わせられる。


映画の中で朗読していた桜についての詩がもう一度、やっぱり文章で読みたいです。読み干したい。奥の奥まで。
どこで読めるのかどなたかおしえてください。
草間彌生が考える、張り裂けそうなギリギリの「生」に会場全体が泣いていました。
天才は作詩をしてもレベルが1テラぐらい違うんだなあ。

シネマライズ ライズX

映画館からの帰り道は、そのインパクトからボーっとしてしまって気付いたら家についていた。
いつもは音楽聴きながらじゃないと手持ち無沙汰なのに。


これを観ずに死ねるか。純粋に感動した。生きる勇気がもらえました。
驚くべき軽い一言で言うと、「マジで超リスペクト」。
「眼光がヤバい!手つきがヤバい!言葉がヤバい!歩く姿がヤバい!発想がヤバい!哲学がヤバい!
その表現力が最もヤバい!」


「皆さん、私が前衛芸術家の草間彌生であります」


訥々と述べるその肉声を再度欲する!

草間彌生〜わたし大好き〜 
http://www.kusama-loveforever.com/

草間彌生 略歴

長野県松本市に生まれる。
少女時代から幻視・幻聴体験にみまわれる中で水玉と網模様をモティーフに絵を描きはじめる。
1948年より京都市立美術工芸学校で日本画を学んだのち、1952年に初個展。1957年に単身渡米。
ニューヨーク他で発表した「無限の網」によるモノクローム絵画で一躍注目され、欧米各地の国際展に参加する。


その後も布製の突起物で覆われたソフト・スカルプチュアや、鏡貼りの一室に電飾をほどこしたインスタレーション等を創始。
また1960年代後半には反戦など社会的メッセージをこめたパフォーマンスのほか、ボディ・ペインティングやファッション・ショーなど多数のハプニングを展開した。
映画も製作、1973年に帰国後は小説家・詩人としても活躍、『クリストファー男娼窟』で第10回野生時代新人賞を受賞した。
1993年にはヴェネツィアビエンナーレ日本代表となる。1998-99年、ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムを皮切りにして、ニューヨーク近代美術館、ウォーカー・アート・センター、東京都現代美術館を巡回する大回顧展が開催された。
2004年には森美術館と札幌・芸術の森美術館で、「KUSAMATRIX」展が開催された。


写真家荒木経惟とのフォト・コラボレーション、作家村上龍作監督の映画「トパーズ」に出演、ミュージシャンピーター・ガブリエル、ファッション・デザイナー三宅一生とのコラボレーションなど、美術以外でも多彩に活躍。

2000年、第50回芸術選奨文部大臣賞、外務大臣表彰を受賞。
2001年、朝日賞受賞。
2002年 松本市美術館開館記念個展、紺綬褒章授賞。
2003年、フランス芸術文化勲章オフィシェ受勲、長野県知事表彰(芸術文化功労)受賞。
2006年、ライフタイム アチーブメント賞(芸術部門)、旭日小綬賞、高松宮殿下記念世界文化賞(第18回)絵画部門 受賞